ネットワーク

「つながる安心と育ち」
~みえ不登校支援ネットワーク設立記念フォーラム~
2010年11月13日 アスト津4Fホール

会長 西田 寿美 からのあいさつ
みなさん、こんにちは。たくさんの方にご参加いただき、ありがとうございます。
私は児童精神科医として県立こども心療センターあすなろ学園で37年ほど勤めてまいりました。この度、みえ不登校支援ネットワークの代表をやらせていただくことになりました。
主として医療的問題と考えられていた不登校
私が仕事を始めた頃、不登校の子どもたちは「学校恐怖症」や「登校拒否」と診断名がつき、医療の治療対象でした。1941年にアメリカのジョンソンが「学校恐怖症」という診断名をつけ、日本では1965年に、日本の児童精神科の先達である京都大学の高木隆郎先生が、学校に行きたいけど行けない子どもたちがおり、統合失調症を疑うような引きこもり状態でも、入院させると短期間に元気になり、病的症状はまったく認めらないことを発表、児童精神科を志す専門家の関心を集めるようになりました。
子どもの問題の裏には大人と社会の問題がある
子どもの問題は、専門家が取り組み始め世間が注目し始めますと、その問題のいろいろな側面が見えてまいります。子どもは一人で生きているわけではなく、大人に囲まれて生きていますので、子どもの問題の裏には大人の問題が隠れています。社会や時代のひずみが弱者である子どもに影響を与えて、子どもの問題として明らかになり、社会が変わっていくきっかけになっていくということがおこります。

医療の視点から教育・社会・家族を考える視点へ
不登校について考えるとき、学校に行くことではなく自立することが最終目的です。そういった子どもたちの治療から始まって、家庭の問題から学校の問題へと視点が変化し、さらに社会自立の問題へと展開し、教育や社会の問題にまで広がってまいりました。文部科学省も「不登校は誰にでも起こりうる教育の問題」と認め、自ら適応指導教室を設置し、民間のフリースクールでも出席扱いとし、高校受験に際しても、不登校が不利とならないような配慮がされるようにもなっています。実際、中学校で長期間不登校だった子どもが、高校進学してからは毎日登校するようになったということがよくあります。
いじめについても、「弱い子だからいじめられる」ではなく、違いを認める人権教育としての取り組みに広がってきました。

ネットワークによって、それぞれの生き方を支えるいろいろなサポートが可能に
人が社会で自立していくとか、自分らしさを見つけていく過程というのは人それぞれで、マニュアルというようなものはありません。その時々で、子どもたちが大切な人と出会い、安心できる居場所を見つけたときに、何か元気になっていくように思います。当事者にとって、自分に合うと思えるやり方や考え方、サポートの仕方がたくさんあり、自由に選べる方がよいに決まっています。そういう主体性が自立の第一歩といえるのではないでしょうか。
私がネットワークに参加したのは、そういうサポートを仕事としている機関や関係者が、「他のところではどんなことがされているのか」「三重県の中でどういう場が用意されているのか」ということを知らないと、目の前にいる子どもや家族に対して適切なアドバイスができないと思ったからです。
「みえ不登校ネットワーク」は、これから相互理解を深め、紹介しあえるようなネットワークにしたいと思っています。不登校の子どもたち一人一人が、安心して社会に自立していけるような援助を、このネットワークからたくさん作り出していけたらと期待しています。

「 みえ不登校支援ネットワーク」によせて
三重県の不登校の子どもたちの「途切れない成長支援」を目指して「みえ不登校支援ネットワーク」が生まれました。
不登校の子どもたちの支援は多様であり、また子どもたちの成長の過程を通して必要な支援も変化していきます。
それぞれの支援機関・団体がネットワークでつながり、そのネットワークが子どもと保護者とつながることで、より多くの子どもたちが安心して育つことができるようになることを願っています。